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きまぐれ

きまぐれに書き散らすところ。

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マフィア戦隊ボンゴレンジャー 20

※Legend of VONGOLAの番外編、アイドル設定です。





それはとてつもない緊張感がスタジオ全体を包むような気持ちにさせるほど緊迫したシーンだった。
ココから先、台本は真っ白。
セリフだけじゃなく、何も書かれていない台本など
ココに居る出演者の誰も経験した事が無い。
物語を演じる者が最後の物語を創り終わらせろという、脚本家の言葉。
無茶苦茶だと憤って投げ出してもおかしくなかった。
それでも、誰一人欠けることなくカメラの前で演じているのは
あの時の綱吉の表情が、伝説はこうして出来るのかもしれない・・・と思わせたから。


+++ +++ +++

目の前で繰りなされる兄と弟の音の無い兄弟喧嘩に、痺れをきらした雲雀が綱吉に声をかける。

「どうするの・・・?綱吉」
「・・・」

その雲雀の言葉にもピクリとも反応を見せない綱吉は
フゥ太から視線を逸らすことなく、もう一度、弟の名前を呼んだ。

「フゥ太」

やはり、怒りも何も声には含まれず、ただその名を繰り返す。
フゥ太も綱吉から目を逸らすことなく見つめ返し続けていたが
二回目の呼びかけに小さくその拳を握り締めるのがわかった。
きっと、フゥ太も初めてだったのだろう
兄が何の感情も無く自分を呼んだ事で、脳に言葉が通じていなかった・・・そんな反応だった。

「・・・ツナ兄、なんでって聞かないの?」

綱吉に縋るような声でフゥ太はそう綱吉に聞く。
裏切られたのは綱吉なのだが、フゥ太のその声はまったく逆なのではないかと錯覚させる。
激昂するわけでもなく、諭すわけでもなく、ただそこに居る綱吉は
ともすれば、とっくにフゥ太を見限ってしまっているようにも感じられた。
中睦まじかった彼等を知っているボンゴレンジャーたちも、動揺してしまっている。
今となっては好意だったのか定かではないが、綱吉に執着していたフゥ太も動揺しないはずがない。

「それもそうだね。・・・なんで?」

綱吉のその返答は、聞けと言われたから聞いたというような適当なものだった。
その綱吉の言葉にキュと唇を引き結んでフゥ太は綱吉を見る。
フゥ太の顔にはそんな対応を期待していたわけじゃないと書いてあるように見えた。

「だって・・・」

そう呟いたきり、黙ってしまったフゥ太にボンゴレンジャーたちの視線が集まる。
その後の言葉を待つように、誰も口を開くことなく、その場に佇むが
そんな中、綱吉は一歩フゥ太に歩み寄る。

「いつか・・・フゥ太が自分で自分の道を決めて、俺から離れて行くってわかってた」

だからフゥ太が決めたことなら納得する覚悟をすると、その瞳は語っていた。
しかし、その奥にはそれでもそっち側につくなら容赦してやれない・・・と寂しい色もある。
フゥ太はそんな綱吉の瞳を見て、首を振った。

「違う・・・僕はツナ兄と離れたくないよ。・・・だから」
「だから?・・・だからでこんな事になってるの?」

少しだけ語気を強くして、綱吉がそう聞き返すのへ返答したのはフゥ太ではなかった。
フゥ太の両隣に控えていた二人のうちの一人、正一と呼ばれていたメガネの男がスと綱吉に歩み寄る。
その男の動きにあわせて、獄寺が一瞬武器に手をかけたが、綱吉はそれを片手で制した。

「よかったら僕が説明するよ。このままだと君たちの兄弟喧嘩が続くだけだと思うし・・・」

その言葉に、やっと綱吉の視線がフゥ太から離れた。
しかし、何をどう説明するかなど考えていなかった正一は綱吉のまっすぐな視線にしどろもどろと言葉を濁す。
的を射ない正一の説明は、ちっとも核心にたどりつくようなものではなく
フゥ太の言葉をなぞるようなものだった。
そんな正一の説明に痺れを切らしたのはザンザスだった。

「・・・まったく説明になってねぇ。・・・ガキ、テメーがテメーの言葉で説明しろ」

そんなザンザスにピクッと反応を示したフゥ太は一瞬、話し出そうとして口を噤む。
とりあえず傍観していたγは顎を撫でるように手をやる。

(これじゃあ・・・擦り付け合いだな・・・いくら天才子役と言っても、物語を動かせってのは酷すぎる。確かに・・・展開としてはこの子が何か起こさないと進まないが・・・)

まったく・・・鬼畜だな・・・と滅茶苦茶なボンゴレ事務所のタレント総括を恨んでもどうしようもない。
ここはなんとかするしかない・・・とγが一歩踏み出そうとしたところで、綱吉が口を開いた。

「フゥ太・・・俺とまだ一緒に居たいと思ってるなら、今までどうりでよかっただろ?」
「・・・今までどうり・・・」
「そうだよ。今までどおりなら、俺はフゥ太を守れるし、もう少し一緒にいられる」

綱吉のその言葉に、フゥ太はキっと睨むように瞳の力を強くした。

「もう少し・・・じゃ嫌なんだ。それに、僕はツナ兄に守ってもらいたいわけじゃないよ。・・・いつだって、僕だけ蚊帳の外だ・・・ツナ兄、僕、もう全部知ってるんだよ?」

フゥ太のその言葉に、今度は綱吉が瞳を大きく開く。
そして少し考えるように瞳を彷徨わせて、決心したようにフゥ太に視線を戻した。

「・・・フゥ太・・・血が繋がって無くても、フゥ太は俺の大切な弟だよ・・・」
「・・・え・・・?」

フゥ太が目に見えて動揺しているのを目の当たりにして、綱吉はしまったと言うような苦々しい表情をした。
これじゃなかったのか・・・とその顔には書いてあり
その表情でその言葉が冗談などではなく、真実なのだとその場の全員にわかってしまった。

「ボス・・・それは、どういう事ですか・・・」
「ツナ・・・」
「ゴメン・・・。フゥ太、フゥ太が知ってる事って何?」

ボンゴレンジャーたちも今までの綱吉とフゥ太の仲の良さを知っているからか動揺を隠せない。
綱吉に説明を求めるような視線が集まる。
しかし、綱吉はその疑問には答えず、逆にフゥ太に訪ねる。
フゥ太は彷徨わせていた瞳を少し泣きそうな顔で綱吉に戻す。
そのフゥ太の表情にキュと胸をつかまれたような顔をした綱吉だが、グッと踏みとどまって返事を待つ。

「ツナ兄が・・・ただのヒーローじゃないって・・・」

フゥ太の言葉にボンゴレンジャーがハッとしたようにフゥ太を見る。
そう、ボンゴレンジャーにはヒーローではない別の顔がある。
それは正義の戦士とはかけ離れたもの。
それを綱吉の弟であるフゥ太が知ってしまうのは仕方の無い事だったかもしれない。

「・・・そう。・・・でも、それならわかるでしょ?俺をヒーローで居させてくれないかな」

綱吉がフゥ太と一緒に居られるのはもう少しだと言ったのも、ここに理由がある。
ヒーローであればその弟という肩書きに傷は無い。
しかし・・・もう一つの顔である方ではその弟という肩書きは出来れば背負わせたくない。
綱吉と人括りに考えられてしまうのはフゥ太にとっていい事ではないと綱吉が思っているから
だから、ヒーローで居られなくなったら、フゥ太と決別しなくてはと綱吉は思っていた。

とんとんとストーリーが作り上げられていく現場に少し感心したようにγは綱吉とフゥ太を見る。
伝説を担う者と称された男と天才子役には、さすがというべきか・・・
ここまでストーリーの方向性が見えてくれば介入の仕方も様々だ。
γは今度こそ一歩踏み出した。

「だからだ」

そのγの言葉に綱吉がγに視線を移す。
それに伴ってボンゴレンジャーたちもγに視線を移した。

「今、お前たち側についてるその男が敵でなくなった以上、ボンゴレンジャーに敵は居なくなる。それではマズイだろう?お前にとってもな、ボンゴレオレンジ」
「・・・その理屈で納得してもいいけど・・・それで貴方たちに何のメリットがある?何でフゥ太に力をかしてる?」

骸を指差して、そう言ったγの言葉になるほど・・・と納得してみせたボンゴレンジャーたちと違って
綱吉はγをジッと見つめて聞き返す。
そんな綱吉の視線にたじろぐでもなく、γはフっと笑った。

「気づいてるんだろ?ボンゴレオレンジ・・・いや、ボンゴレの次期ボス沢田綱吉。俺たちもお前たちと同じだ。ただヒーローに仇なすものってわけじゃない」
「・・・つまり、俺たちがヒーロー業に専念してればお前たちに都合がいいわけか・・・」
「そういうことだ」

ニヤと笑って見せるγに少々の怒りを覚えるが、それをグッと堪えて綱吉はフゥ太に向き直る。
これでは、フゥ太が利用されていると言う事になる。
どうにかフゥ太を助けたいが・・・どうしたら、フゥ太に解って貰えるだろう。
考えるようにフゥ太の顔を見ていた綱吉の肩を雲雀が叩いた。

「ねぇ、綱吉。弟離れできてないの、君の方じゃないの?」
「・・・そ、うですかね・・・やっぱり・・・」
「あの子とずっと居られないのわかってたなら、今、覚悟決めなよ」
「でも・・・フゥ太は利用されてるんです。ほうっておけないじゃないですか」
「それもあの子の人生だよ。あの子が自分で決めた事の決着は、あの子が自分でつけないと」

雲雀の言う事ももっともで、頷きそうになる。
しかし、綱吉はまだ自分に出来る事があるなら、フゥ太にしてやりたいと思ってた。
そんな二人にザンザスがその場を離れることなく声を出した。

「好都合だな。こっちはヒーローとしてヤツ等潰していいってことだろ?何を迷う必要がある?」

それはまさに正論で、綱吉もココに来るまで好都合だとそう思っていた。
ココに来て、フゥ太と対峙するまでは・・・。
相手がフゥ太だから・・・ではザンザスにどやされそうだが、それでも弟を傷つける決心なんてつけれるわけがない。

「ねぇ、フゥ太・・・どうして?」

初めて綱吉は心の底からフゥ太に理由を問う。
それは先ほどの適当な問いではなく、真剣な問いだった。

「ツナ兄がボンゴレンジャーで居られるようにだよ」
「フゥ太はボンゴレンジャーがこの世にあった方がいいって思ってるんだね」
「・・・何、言ってるの?ボンゴレンジャーが居るからみんな平和で居られるんでしょ?守ってくれるヒーローなんだから」

それはこの世の心理で誰もが認めた正しい見解。
ヒーローが居ればこの世の平和は守られる。
しかし、綱吉はそう思っていなかった。

「ボンゴレンジャーは平和の証なんかじゃないよ。ボンゴレンジャーというヒーローが居なくちゃいけない世界なんて平和なんかじゃないんだ」

本当の平和は・・・ヒーローなんて必要の無い世界。
ヒーローが必要な世界とは、悪がはびこる世界。
綱吉が目指すのは、ボンゴレンジャーが必要ない世界。
それはこの場の誰も思い描かなかった平和の姿だった。

「そうか・・・ボンゴレンジャーが居なくなるとコッチは困るんだがな・・・」
「別にボンゴレンジャーとしての任務がなくなったからと言って、あっちに専念するわけじゃない」
「だったら俺たちのした事は見当違いってわけか・・・」

その綱吉の理想を聞いたγがため息をついた。
それは、はじめからボンゴレンジャーに照準を合わせた時点で間違っていた事に
ようやく気づいたといった様子だった。
そんな事にはとっくに気づいていたらしいユニは、ただ納得したように頷いた。

「それに・・・ボンゴレンジャーが全く無くなる事はありえないよ」
「敵が居なくなったら任務がなくなるんじゃないのか?」
「今までだって任務がない時なんて普通にあったよ。骸が出てきた頃から任務続きだったけど・・・」
「何ですか・・・僕のせいですか?」

その骸の問いにボンゴレンジャーたちは揃って頷いた。
とりあえず、取り繕うように咳払いした綱吉は、フゥ太にもう一度向き直る。

「フゥ太・・・君がココに居たいならそれを止める権利は俺には無い。俺はココに君と一緒には居られない。フゥ太がどうしたいのかは、フゥ太が決めて?」

俺たちは先に帰ってるから・・・と言い残して綱吉はその部屋を立ち去った。
その綱吉を追うようにボンゴレンジャーたちもその場を引いていく。
最後に残ったザンザスは、フゥ太に言った。

「結局最後は自分しか頼れねぇ。負担かけるだけなら戻ってくるな。・・・ただ、お前はアイツの側に居るだけで支える事ができる唯一の存在だ。お前がしたい事が何か、よく考えろ」

そうして去っていったボンゴレンジャーたちを見送るように
その場に残った者は全員、入り口をしばらく眺めていた。
しばらくして、フゥとγがため息をつくと、正一がガシガシと頭を掻き、ユニはフゥ太に一歩近づいた。

「ボンゴレオレンジが言ったように、私達が貴方を利用しようとしたのは真実です。貴方が辞めるならそれを止める権利は私達にもありません」
「・・・そうだね、ユニの言う通りだ。僕達じゃ彼にはまだ敵いそうもない」
「だな、ウチは不覚にもボンゴレオレンジがカッコよく見えた」
「ボンゴレンジャーが必要な世界は平和じゃない・・・とか悟った事言われちゃ~な・・・ヒーローってのは言う事もカッコイイもんだ」

すべてから手を離された感覚に、フゥ太は一瞬怖くなって、拳を握る。
誰かに縋りたいと思う自分じゃ、綱吉の元には帰れない。
ただ一緒に居られるだけを始めに嫌がったのは自分なのだから。

立ち去って行く背中を一人見送って何かを考えるようにフゥ太は瞳を閉じた。




「・・・ボス、弟さん帰って来ますかね・・・」
「それは・・・わからないよ」

第二部隊のアジトで何をするでもなく座るボンゴレンジャーたち。
そこに着替えを済ませた第二部隊の面々が姿を現す。

「帰って来るだろ。初めからあのガキのしたい事は一つきりだったからな」

ザンザスのその言葉は慰めなのか励ましなのか良くわからなかったが、綱吉は小さく頷いた。
今までフゥ太と生きてきた年月は、血なんか全く関係ない絆。
きっとフゥ太ならわかってくれる。

そんな時、部屋の扉がバンと思い切り開いた。
吹き飛ばされるようにたたらを踏んで部屋に入ってきたのはフゥ太だった。

「このガキ、そこで入りにくそうにしてたから連れて来たぜぇ」

連れてきたというか突っ込んだが正しい・・・とは思ったが、そんなスクアーロには何も言わないでおく。
むしろ、まごついてたであろうフゥ太を連れ込んでくれたことに感謝する。
つんのめって入室したフゥ太の側にすぐさま行った綱吉はぎゅうとフゥ太を抱き締めた。

「おかえり。フゥ太」
「・・・うん。ただいま、ツナ兄」

そんな二人を静かに見つめていたセコーンドはゆっくり二人に近づくと
ポンポンと二人の頭を撫でる。

「しばらくはボンゴレンジャーは活動休止にできるな。ゆっくりしろ」

そのセコーンドの言葉にフゥ太はセコーンドを見上げた。
その瞳は少しだけ不安そうな色をしていた。

「心配するな・・・って言うのも変だが・・・ボンゴレンジャーは無くならない。戦わなくてはならない敵が居なくなる事がないからな」

綱吉の目指す平和は、机上の空想に過ぎない。
この世から悪が無くなる事は無い。
それを一番よく知っているのは、他ならぬボンゴレンジャーなのだから・・・。





__________
もぉう・・・終わんないかと思った。
え?長くね?コレ・・・
二回に分けてもよかったんですが・・・めんどうでさ・・・
こんな感じでボンゴレンジャーは最終回です。
放映後話しとかも書きたいかなぁ~とは思ったのですが・・・
オフのページ数に余裕があれば入れときます。
なかったら、脱稿後にコチラで書こうかな。







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マフィア戦隊ボンゴレンジャー 19

※Legend of VONGOLAの番外編、アイドル設定です。





長かったような短かったような通路を抜けると
ソコはぽっかりと岩をくり抜いた様な空間が出来ていた。
その部屋の奥、正面に玉座のように置かれた椅子に座る人影。
奥には光が届いておらず、その姿をはっきりと確認する事はできない。
ボンゴレンジャーたちが目を凝らす様に奥を見つめていると
その玉座から人が立ち上がるシルエットが見えたの同時にそのシルエットが声を発する。

「ツナ兄・・・」

それはフゥ太の声だった。
玉座から立ち上がり、ゆっくりとこちらへ歩んでくる人影は光の中に姿を現す。
綱吉の前で立ち止まったフゥ太に、ユニとγが頭を垂れた。

その光景を信じられないものを見るようにボンゴレンジャーたちは時を止められたようにただ見つめる。
フゥ太の後ろからフゥ太に従うように二人の男が姿を現す。
どちらもγと同じ戦闘服を少々だらしなく身に纏い、そこに居たボンゴレンジャーと第二部隊を見渡すように眺める。

「正一・・・本物のボンゴレンジャーだ」
「そうだよね・・・やっぱ普通こういう色だよね・・・みんなパステルだったらどうしようかと思った・・・」

そんな二人の暢気な会話に、ビシっとこめかみに血管を浮かせるのは第二部隊の面々。
どうやら第二部隊はこの二人と面識があるようだ。
きっと、今まで第二部隊が相対していたのはこの二人なのだろう。
睨みつける第二部隊の面々と視線をあわせないように視線を素通りさせた二人は
ボンゴレンジャーの真ん中に居るオレンジ色のボンゴレンジャーに目をとめる。

「ボンゴレオレンジだ、正一」
「スパナ、いちいち報告しないでも僕だってそれくらいわかるよ。あの人がフゥ太くんのお兄さんか・・・」

ヒーローとして申し分ない正義感を形にしたようなその強い瞳に正一はうん、と頷いた。
その正一の横でスパナもじぃっと綱吉を見つめた。
そうしてしばらく綱吉を見つめた後
ユニとγがフゥ太に従う意思を示すように頭を垂れているのを確認して
二人もフゥ太に向き直るとフゥ太に敬礼してみせる。

「うん。僕たちは君に協力しよう」
「そうだな・・・ウチたちにできる事はあまり無いが、アンタを指示する事にする」

それは即ち、綱吉たちの目の前でフゥ太が敵の親玉になった瞬間だった。
綱吉は動揺を隠すように強く拳を握る。
それでも目をフゥ太から逸らすことなく、まっすぐに見つめていた。
フゥ太も同じようにまっすぐ綱吉だけを見つめる。
そこには今までの兄弟の絆とは違う何かがあるように感じられた。

単純に考えれば、弟が兄を裏切ったと言う事なのだが
何かがしっくりとこない気がするのは
今までの綱吉とフゥ太を少しでも垣間見てきたからかもしれない。

「フゥ太」

スゥと息を吸って、綱吉は静かに・・・そう、とても静かにフゥ太の名を呼ぶ。
その声音には憤りも諦めも何も感情らしい感情がなかった。
それゆえ、ボンゴレンジャーたちはそれが綱吉がフゥ太を呼んだ声だと一瞬気が付かなかったほど
何もかもが違っていた。

綱吉とは反対に、動揺を隠せずにいたボンゴレンジャーの中には
フゥ太が操られているとか、弱みを握られているとか
そういうのっぴきならない事情があるんじゃないかと思っていた者も居たが
綱吉のその声に、フゥ太がフゥ太の意思であちら側に居るのだと言う事を知る。
そんなボンゴレンジャーたちの動揺は増すばかりだったが
綱吉はただ静かにフゥ太を見つめていた。
先ほど強く握った拳も自然な形へ戻っている。

例えようも無い緊張感がその場を支配する。


+++ +++ +++

時は数時間前に遡る。
ボンゴレンジャー最終シーンの撮影をひかえたボンゴレ事務所のタレントと
今回、協力してくれているミルフィオーレ事務所のタレントが
撮影所の一角に集まっていた。

普通、ドラマの撮影というのは放映される順に撮影を進める事は無く
何話の何処を撮影したら次は違うシーンを・・・というように行ったり来たりした撮影が多い。
しかし、このボンゴレンジャーは放映されているのと大差ない撮影順序で撮影が進められてきた。
それというのも、撮影前にいきなり台本が書き換えられたりと言う事が多かったのも一つの理由だろう。
そんな脚本を書いているリボーンは、最終話の台本を皆に手渡しながら
ニヤとタレントたちの顔を見て所謂、会心の笑みを見せた。

「台本は行き渡ったか?」

リボーンのその言葉に答える声や頷く気配を確認して、リボーンは輪の中心で一人一人の顔を見渡す。
台本に目を通す全員の反応を楽しみにしているその表情はいつになく楽しそうだった。
皆、静かに渡された台本に目を通していたのだが
その台本を読む目線が一様にとあるページで止まるのを見て
リボーンはまたニヤと笑みを濃くした。

「・・・リボーン・・・」
「なんだ?ツナ」
「ごめん、これって俺のだけ?ここから先、台本に何も書いてないんだけど・・・」

その綱吉の言葉に、他の者も皆リボーンに視線を移す。
リボーンは楽しそうな顔のまま、そんな皆の顔を見渡して最後に綱吉を見た。

「いや、ツナのだけじゃねーゾ」
「え・・・って事はこの先は?まだ書けてないってこと?」

しかし、書けてないでは今日の撮影が全く進まない事になる。
どうするんだ・・・?という動揺のようなざわめきが広がる中
リボーンはきっぱりと言い切った。

「違うゾ。その先は勝手にヤれって事だ」
「・・・は?」
「その先からラストまで、全部アドリブでヤれ。できるな?」

できるな?と綱吉の目を見て言うリボーンが冗談を言っているとは到底思えない。
今までも、ある程度アドリブで繋げ的な台本の流れではあったが
とあるシーンからラストまで最後の話しをどう締めるのか全て自分たちで勝手に演じろと言うのは
どう考えても普通じゃないし、無茶だとしか思えなかった。
しかし、リボーンの有無を言わせぬその「できるな?」を綱吉はよく知っていた。
これは何を言っても覆らない・・・やるしかないのだと言う事を・・・。

「聞きしに勝る無茶苦茶ぶりだな・・・ボンゴレ事務所のタレント総括サンは」

ボンゴレ事務所のタレントならば幾分慣れたそのリボーンの無茶に
完全に巻き込まれた形となったミルフィオーレ事務所のタレントであるγが小さくそうこぼす。
そのγのこぼした小さな声を聞き逃さなかったリボーンは
ミルフィオーレ事務所の面々に向き直るとニヤと口端をあげる。

「オメーらんとこの社長に、オメーらも伝説の一員になったって言ってやれ。喜ぶんじゃねーか?」
「伝説の目撃者の間違いじゃないのか?」
「オメーらも演じるんだ。傍観者でいられると思うな」

そのリボーンの言葉にγはハッとしたように瞳を見開く。
ボンゴレ事務所の手掛ける世紀のヒーロードラマ・・・
それはいくら自分が出演者であってもどこかブラウン管の中の出来事のように感じていた。
しかし、自分の手元の台本にもこのドラマの行く末は記されていない。
その事に気が付いて、一気に不安な気持ちに気づかされたミルフィオーレ事務所のタレントたちは
何故か一斉に綱吉を見ていた。
ボンゴレ事務所のタレントたちも皆、一様に綱吉へ視線をやっている。

綱吉は真っ白な台本をしばらく眺めると、ひとつ瞬きしてリボーンを見る。
それは少しワクワクしたような挑戦する瞳。
ニっとリボーンはそんな綱吉の表情に会心の笑みを返したのだった。





__________
さて、次が最終話です。たぶん。
予想通りでしたか?
最後の敵はフゥ太です。
ちょっとは皆さんの予想を裏切れたかな~(笑)







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